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2014年 03月 21日

消えて無くなる。



消えて無くなる。_e0335910_23112547.jpg


毎月20日は、写真雑誌の発売日。

今回は『アサヒカメラ』(四月号)を選び、パラパラと眺めていました。

今年は木村伊兵衛(1901~1974)の没後40年の年。
特集が組まれており、その中の一つに、現在活躍中の写真家が、「木村伊兵衛のこの一枚」を選び、その出会いを書きつづったエッセーが出ていました。

今月は篠山紀信で、「人を撃ってはいけません」と題された一文。

ほんの一部分ですが、こんな文章が出ています。




(前略)他の写真家は技法を真似ることで、表面的ではあるが、一応なんとか似た様なものは出来る。
だが木村先生の写真はちがう。
先生の存在感、生き方、対象への視線(まなざし)と距離感、そして阿吽(あうん)の呼吸のシャッターチャンス。
そのすべてが合致して、はじめて木村写真が誕生する。
ライカで撮ればいいってものではない。(略)
木村先生の撮影現場を実際に見たことがある。
73年、日中友好撮影家訪中団の一員として中国を訪れたときだ。
人民服の群衆があふれる市場の中で、写真を撮る日本人の姿はどうしたって目立つ。
だが先生がカメラを構えた瞬間、先生の姿が群衆の中から一瞬消えて無くなる。
何事も無かった様な普段の光景、その時に先生はシャッターを押しているにちがいない。
このときはじめて「市場」の謎が解けた。
ぼくはといえば最新型モータードライブ付きカメラでバシャバシャ音を立てて、機関銃のように連写している。
先生がぼくに言った。
「篠山さん、人を撃ってはいけません。それにそんな重いカメラ、体を悪くする」。



「群衆の中で消えて無くなる」。

しばしば聞くフレーズですが、どこか恐ろしいですよね。

市場を撮ろうとして頑張るとき、市場そのものの姿を見失ってしまうような。

逆に、市場の中に消えて無くなる時、見た目ではわからないけど、市場の中にうごめいている姿を写し撮るような、そんな感じがしました。

これはカメラ、写真だけの話ではないと思いつつ、写真の魅力を改めて感じました。




by kourin17 | 2014-03-21 23:22 | エッセー


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